先日、友人と『エリザベス』を観に行った。歴史物だから、老人・中年もしくは余程の物好きしか
見に来ないだろうと思っていた。ところが、開演前になると立ち見客も出てきた。少し驚いた。
物語は、16世紀、旧教(カトリック)と新教(プロテスタント)の宗教対立で、幽閉されている新教徒
が公の場で火あぶりの刑にされる所から始まる。囚人の頭の毛ををナイフで剃り、毛と共に
皮膚もえぐられあたりは血みどろ・・・とえぐい場面からだ。「うッわぁー、暗い映画だな」が
第一印象。その後、場面は一転し、明るい太陽の下、侍女たちと踊るエリザベスが登場する。
この頃の彼女はまだ世間を知らないお嬢さんといった感じだ。先代のヘンリ8世と愛人アン・ブーリンとの
間に生まれた私生児だ。(ヘンリ8世がたくさんの妾を持っていたのは知っているが、子供にエリザベスが
いたことは知らなかった。)私生児であり、また新教徒であるために、メアリー女王亡き後、女王に
なったエリザベスは、政略結婚・宗教対立・スコットランドからの侵略・恋人の裏切り・毒殺事件・・・など数々の
窮地に立たされる。事あるごとにエリザベスは強くなっていく。最終的には愛・若さ・女性としての脆さを
捨て、「国・国民と結婚」し、処女王となり、崇高な存在となるのだった。
映画を観ていると、CASTに見覚えのある人たちが登場した。エリザベスの恋人役を演じたジョセフ・ファインズ
は、「恋におちたシェークスピア」でシェークスピアをやった人だ。エリザベス女王に終生忠誠を尽くした
部下ウォルシンガムを演じたのは、ジェフリー・ラッシュ。彼も同じく「恋におちたシェークスピア」に
出ているようだ。彼の場合、「レ・ミゼラブル」にも刑事役で出ていたような気がするのだが・・・?
それにしても、ジョセフ・ファインズが演じたシェークスピアだが、シェークスピアもエリザベス女王と
同じ時代に生きた人だ。「恋におちたシェークスピア」では、女王の足元にも及ばないただの劇作家を演じた
彼が、この映画では女王の恋人役を演じるとは・・・。時代が似ているだけに、映画にあまり新鮮味が
感じられなかった。恋人役にはせめて、違う人を選んで欲しかった。というのも、この映画「エリザベス」は、
「恋におちたシェークスピア」とアカデミー作品賞を競った話題の一本だからだ。そういう理由からも
別の俳優に配役するべきであったと思う。
次に残念だと思うのは、登場人物が多すぎるし、相関関係も複雑すぎて分かりづらかった。
エリザベス女王に求婚していたスペイン王フェリペだが、彼がメアリー女王(エリザベスの異母姉妹)の夫であった
というのも、後から本を見て知った事だ。話の展開も早すぎる。始まった直後からトイレにも行きたい・・・あ、これは
話の筋には関係ないか。とにかく話が分かりづらい映画だった。
予算を食ったというだけあって、衣装はすごかった。女王になる前から、即位後、数々の試練を超えて
成長していくエリザベスの変化を衣装とメイクで見事に表していた。困難を潜り抜けていくたびに
衣装は重量感を増し、胸元の開いた服を着なくなり、襟飾りが高くなっていく。服の色もだんだん地味になっていき、
最後は純白に。最後のメイクがすごい。純潔を表す為に、髪をバッサリと切り、かつらをかぶり、顔を白く塗りたくった
彼女は、まさに歴史の教科書どおりの肖像画と同じ顔だった。
ちなみに、彼女は、かつらを200個以上、アクセサリーの真珠を300個以上持っていたそうだ。世界で初めて
腕時計をはめたり、水洗トイレを世界で初めて使ったりと・・・。いろいろな生活様式を今に伝えているようだ。
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