海外旅行に行っていつも思うのが、その国の歴史なり前もって知っていれば、もっと旅が楽しくなっただろうに、ということだ。美術館には多くの絵画がある。初めは一つ一つゆっくり見てても、あまりの数の多さにだんだん疲れてきて、壁に絵画の掛かった廊下をただ歩いているだけという状態になったことはないだろうか?または絵をただ見ているだけということは?文学と同じように絵画にも象徴的な意味を持たせるものもある。宗教画など特につまらない分野だろう?そんな気持ちが少しでも無くなれば、と今回は美術画に見る天使、を挙げようと思う。
【天使、キューピッド】
天使と言えば翼を思い浮かべるが、『初期のキリスト教美術では天使には翼が描かれていなかった。4世紀初頭、ローマ皇帝コンスタンチヌスの時代になって翼をもつ姿となった』らしい。モデルになったのは、ギリシャ神話の勝利の女神ミケ。あの両腕首のない像である。ルネッサンス期になるとそれまで青年の姿をしていた天子が翼が生えた赤ん坊になったようだ。この子達をプット(Putto)、イタリア語で「幼児」という意味。このプットには天使とキュービッドがある。キュービッドは基本的に弓を持っているが、そうでない時がある。『そんな時は、プットたちが誰の周りにいるかで判断する。聖母ならば天使、女神などならばキューピッドだ。その性格上、聖母は敬虔なポーズをとり、女神は大胆なポーズをとっている。』例を挙げれば、『ヴィーナスの誕生』では女神が真っ裸で寝返りを打っている上にキューピッドが飛んでいる。なんとも分かりやすい。
【顔だけの天使】
6枚の翼のはえた顔だけの天使がいる。天使のなかで一番えらいセラフィムと次に偉いケルビムがそうだ。なんだか不気味な姿・・・。
【智天使ケルビム】
エゼキエルの幻視によるケルビムは、『正面は人間の顔、右には獅子の顔、左には牛の顔、後ろには鷲の顔がある4つの翼をもった天使』。さらに、『ケルビムの傍らには、周囲一面に目のついた車輪』、トロウンズ(座天使)がいた。画家もこの複雑な天使を描くのには苦労したようでラファエロでは画面構成上車輪が省かれている。そりゃ、うまくまとめるのも辛かろう。新約聖書の四福音書作者はこの4つのシンボルで表されるらしい。マタイは有翼の人間。マルコは有翼のライオン、ルカは有翼の牡牛。ヨハネは鷲という具合に。
【9階級からなる天使社会】
上級天使(熾天使・智天使・座天使)、中級天使(主天使・力天使・能天使)、下級天使(権天使・大天使・天使)とある。この9階級は偽ディオニュシオス(B.C.500)によって作られ、13Cにトマス・アクイナスによって『神学大全』でキリスト教思想を体系づけた。
天使の例はまだまだ沢山ある。色々勉強して絵画を見るのもまた楽しいかも知れない。
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